'08/05/20

今、多録(多重録音)ってどうなんでしょうね?あ、いや、人気あるのかなぁ、と思って。

僕も昔少しやってましたけど、もう何年もやってないですね。
持ってるMTR(マルチトラックレコーダー)も一応ハードディスクに録音するタイプの8トラックでミキサー一体型ですが、ヴァーチャルトラックとかいうの使えないですし、エフェクターも内蔵されてないですしね。

そんなわけで、僕の知識も古いでしょうが、基本的な仕組みというか考え方は変わってないと思うので、多録についてチョット書いてみようかと思います。
興味があってこれからやってみようかな、と思っている人のいくらかの参考にでもなれば

「多重録音」っていうぐらいなので、音を重ね録りするわけで、つまり一人で複数の楽器やフレーズを弾いて、それぞれを別々に録音しても、それらを同じタイミングで同時に再生して、あたかも複数の人が演奏しているかのように聴かせることができる、ってヤツですね。

んで、これを実現する為にあるのが、MTR(マルチトラックレコーダー)。
ま、もっとも今はパソコンでも出来ますけどね。それも含めて、たぶん基本的な考え方は同じだと思います。

僕はMTRでしかやったことがないので、ここではMTRで話します。

MTR(マルチトラックレコーダー):
「トラック」というのは、録音するトコ(領域)ですね。それが「マルチ」、つまり複数あるということです。ま、普通の「ステレオ」もマルチと言えばマルチトラックですね。右のスピーカーから出る音と左のスピーカーから出る音が、別々のトラック(2トラック)に録音されています。

通常、マルチトラックレコーダーというと、4トラック以上ですね。ま、話は4トラックでします。トラック数が増えても考え方は基本的に同じなので

んで、マルチトラックレコーダーの特徴というのは、トラック数が多いという事だけじゃなくて、それら複数のトラックを独立して「録音」または「再生」させられるという事です。これが出来ないと多録が出来ません。





安直な絵ですが。(^^;
録音は↑方向にされると思って下さい。
あ、何言っているかわかんないでしょうかね?イメージ的には4トラックのテープレコーダーのテープを書いた感じですね。1本のテープを進行方向に4つのトラックに分割している絵です。まさに、マルチトラックのテープレコーダーはこんな感じでイメージしやすいんですが、ハードディスクはこのようにはなりませんね。ま、でも、考え方は同じです。

たとえば、

録音手順の例:
1)1トラックを録音状態にし、ドラムマシンまたは本物のドラムなどのリズムガイドとなる音を録音する。
2)1トラックを再生,2トラックを録音状態にし、1トラックのドラムの音を聞きながら、それに合わせて2トラックに(楽器の)ベースを録音する。
3)1トラックと2トラックを再生,3トラックを録音状態にし、1トラックと2トラックの音を聞きながら3トラックにアコギを録音する。
4)同様に、1~3トラックの音を聞きながら4トラックにボーカルを録音する。

こんな感じで録音をして、1~4の全トラックを再生にすると、全ての音がジャストのタイミングで再生されます。
ただし、「ジャストのタイミング」になるかどうかは、あなたのウデ次第です。(笑)
おそらく、何かのテンポに合わせて演奏したことのない方は、テンポを合わせて演奏することの難しさを認識することとなると思います。



Drum


Bass


AG


Vocal

これで録音はヨシだとしても、このままだとこのMTRでないと音が聞けないんですよね。
なので、一般的な再生機器で聞けるようにする為に、通常のステレオ(2トラック録音)の状態にして、CDとか他の録音媒体に記録します。
通常は「マスターテープ」となるものを作りますね。

んで、この時に必要になるのがミキサー。
(あ、いや、これよりも前に、録音する時や録音したものをモニターする時にも使いますね。ミキサーの機能が分れば使い方も分かると思います)

多トラックを2トラックにするので、「トラックダウン」とか「ミックスダウン」とか呼ばれている作業になります。


エフェクト送り→MIXER
イコライザー→



□□□□
□□□□
パンポット→ 
フェーダー→











■■
■■
□□
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4チャンネルのミキサーを書いてみました。重ね重ね、安直な絵ですが。(^^;
簡易ミキサーを除いて、通常のミキサーには、最低でも絵のようなコントロール類があると思います。(イコライザーの行の一番右端は、レベルメーターのつもりです)

ミキサーのグレードにより機能に差がありますが、基本的な機能の概略だけ書いてみます。てか、基本的な機能の概略しか知らんのですが。(^^;
あとは、購入した機材の取説を読んで下さいナ。

【エフェクト送り】

エフェクターに送る際の出力レベルを調整するツマミです。
「EFFECT SEND」とか「AUX SEND」とかいう名前がついています。そして、これに対応するジャックも存在します。
また、絵には描いていないですが、エフェクターから戻ってきた入力レベルを調整するための「EFFECT RETURN」とか「AUX RETURN」とかいうツマミもあります。定かではないですが、このツマミは無いモノもあるかもしれません。
そして、ミキサーにより、送り先が1系統だったり2系統だったりします。

んでここで、「エフェクターの設定は、全音源とも共通?」とかちょっと疑問に思う方もいるかもしれませんが、共通です。
送るレベルを調整してエフェクターのかかり具合を調整するような感じです。トラックダウン時のディレイやリバーブなどのような空間系のエフェクター処理ならこれで間に合うと思います。各々の音源に対する特徴的なエフェクトは、おおかた録音する時にかけておくようになります。

【イコライザー】

一般的にトーンコントロールと呼ばれているモノと同じような効果があるモノですが、「トーンコントロール」というのは通常「カット」のみだと思いますが、「イコライザー」は「ブースト」もできます。

ここはミキサーのグレードで結構異なるとこですが、イコライザーには大きく分けてグラフィックイコライザーとパラメトリックイコライザーというのがあります。

グラフィックイコライザーは、イコライジングできる周波数が固定になります。ですので、通常ツマミには「HI」とか「MID」とか「LO」とか書いてありますね。
もちろん、ミキサーにより「HI」と「LO」だけだったりします。

それに対して、パラメトリックイコライザーは周波数帯域も可変できます。ですので、周波数を決めるツマミとゲインを決めるツマミで1セットになっています。
やはりこれにも2セットあるものや、3セットあるもの、またはパラメトリックイコライザーとグラフィックイコライザーが組み合わされているものなどがあります。

やはり、パラメトリックの方が高価なのですが、できればパラメトリックをお勧めします。
音源によって、イコライザーの効きのいい周波数帯域が異なるので、パラメトリックイコライザーはとても有効です。

使い方は、とり合えず適当にブーストなりカットなりをするようにゲインを決めて、次に周波数帯域を調整するツマミをグルグルと一回りさせてみると効果的なポイントが容易につかめるので、その後ゲインをキチンと調整すればいいと思います。たぶん、グライコしか使ったことのない人は感動すると思います。(笑)

【パンポット】

音のステレオ定位を決めます。
つまり、右(のスピーカー)から聞こえるようにするとか、左(のスピーカー)から聞こえるようにするとか、真ん中から聞こえるようにするとか、です。
普通は連続で可変できるはずですから、真ん中よりちょっと右寄りとかも出来ます。
要は、それぞれ2つのトラックの録音レベル(音量)の振り分けをします。右用と左用のトラックに同レベルで録音すれば中央から聞こえるということです。

【フェーダー】

入力レベルを調整します。
録音する時には、インプットジャックからの入力信号の調整になりますし、トラックダウンの時には、レコーダーの出力信号の調整になります。

トラックダウン時には、各音源の音量バランスを考えてフェーダーの位置を調整しますが、録音時には、なるべくノイズや歪みが少ない「基準レベル範囲」内に収まるようにします。通常、0dB±5dBぐらいだと思いますが、ミキサーにより目盛りが0~10のようになっていたりするので、それぞれの取説でご確認を。

ただ、たとえば、「マイク」と「キーボードなどの電子楽器」では出力レベルが大きく異なりフェーダーだけでは対応しきれないので、大抵はフェーダーとは別に入力レベル調整のスイッチまたはノブが付いています。ですので、これも調整することでフェーダーが基準レベル範囲内に収まるようにします。

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おそらく今はMTRと言うと、マルチトラックレコーダーのみをいうのではなく、マルチトラックレコーダー+ミキサー+エフェクターの一体型を指していると思うので、それ1台があれば多重録音ができるはずです。

最近のMTRについては疎いのですが、まだカセットテープを使うMTRって売っているんでしょうかね?
もしあってもHDDなどを使ったデジタルのMTRをお勧めします。ちょっと高価になりますが、音も良いですし、耐久性もカセットテープMTRよりもいい筈です。
やはり、多録をするとなると、通常の録音再生機器よりもはるかに過酷な使用になるので、カセットテープMTRでは、ヘッドとかモーターとかがすぐにイカれると思います。
また、操作性もデジタルの方がいいです。頭出しとか巻き戻しなども瞬間で移動しますから操作のストレスがありません。これ、結構重要です。

あ、あと、ここでは4トラックのMTRで話をしましたが、買うときにはトラック数もよく検討してください。
たとえば、「タムタムが左右を移動するようにドラムをステレオで録音したい」とかになると、それだけで2トラックを使ってしまいます。
録音テク(?)として、「ピンポン録音」というのがあるのですが、いろいろ制約があるので、やらないで済むのであればやらない方がいいです。
ちなみに、「ピンポン録音」というのは、「複数のトラックの音をまとめて他のトラックに録音し直し、空きトラックを増やすこと」で、例えば前の例の



Drum


Bass


AG


Vocal

で、4トラックのVocalを録音する前に、1トラックのDrumと2トラックのBassと3トラックのAGをまとめて4トラックに録音するなどして、空きのトラックを増やすことです。






Drum
Bass
AG

デジタルならば音質劣化については考えなくていいでしょうが、これをやると、同じトラックの音(Drum,Bass,AG)はステレオ定位やエフェクト送りが同じになってしまいますし、各音源の音量バランスもこのピンポン録音の段階で決まってしまい、トラックダウンの時に調整できません。

話はこんなとこですが、このぐらいの予備知識でもあれば、カタログを見るにしても、取説を読むにしても、理解しやすいかもしれません。
ただ、これはMTRの基礎知識程度なので、実際の録音作業で、より良くあるいは自分の思った音で録音しようとすると、それにはやはり機材の知識とかセッテイングの知識とか経験とかが必要になります。

もし、興味があればトライしてみたら如何でしょうか。もちろん、やればやっただけ得るものはあるはずです。




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